時間感覚がずれるわけ

1月13日付けの読売新聞夕刊、こころのページ(3版8ページ)に、「年齢、状況…ずれる『心の時計』」という記事がありました。ここで取り上げられているのは、「時間学」。

時間学

哲学や物理学などで別々に行われてきた「時間」に関する研究を、文系理系の枠を取り払い総合的にとらえようとする新しい学問。生活リズムと病気の関係、時間感覚を踏まえた社会政策なども対象。2009年に設立された日本時間学会には、理、工、医、文など様々な学部から研究者が参加。山口大には時間額研究所がある。

(以上読売新聞より抜粋)

とあります。非常に面白そうな学問ですね。

記事を簡単に紹介しますと、

  • 年をとるにつれ、時が早く過ぎるように感じるのはなぜか?
  • 同じ時間でも、時と場合によって、短く感じたり長く感じたりするのはなぜか?

という、二つの質問に答える解説がなされています。

年をとるとなぜ時間が早く過ぎるように感じられるのか?

この疑問に対する一つの回答として紹介されていたのは以下の実験。

  • 実験対象:4歳から82歳の3500人
  • 実験内容:「3分」と感じた時点でボタンを押し、実際の時間とのズレを計測する
  • 実験結果:年齢が高くなるほど、次歳の3分より長くなる傾向
  • 結果分析:2〜4歳年齢が上がるごとに1秒長くなる。70歳では1割増し(18秒長い)。

この実験から分かることは、「本人が自覚している時間は、年をとるほど実際の時間の進み方よりも遅くなる」ということです。高速道路を60km/hでゆっくり走っていると、周りのクルマが速く移動しているように感じるのと同じように、自分の時間の進む速度が遅くなっているので、本来の時間の進みが「相対的に」早く流れているように感じるため、「年をとると時間の進みが早くなったように感じられる」というのです。

「心の時計」に影響を与える要因

同記事では、自分が感じている時間感覚、すなわち「心の時計」に影響を及ぼす要因として

  1. 代謝:新陳代謝が良いほど、心の時計が早く進み、時間を長く感じる(有力な仮説)
  2. 感情:恐怖を伴う時間は長く感じるらしい
  3. 時間に注意を向ける頻度:頻繁に時計を気にすると、時間を多くの部分に分節化して認識し、長く感じる(仮説)
  4. 印象に残る出来事の数:印象に残る出来事が多い時間の方が、長く感じられる傾向がある。
  5. 刺激:大きい物・音に接するなど、強い刺激を受けた時間の方が長く感じる

という5点を挙げていました。

時間感覚についてもうちょっと突っ込んで考えてみる

この記事を読んで感じたのは、「時間」には様々な側面があるということです。まとめてみますと、

  1. 物理的な時間:アインシュタインの相対性理論で規定される時空における「時間」
  2. 生物的な時間:生体・代謝に起因する、生物としての「時間」
  3. 「考える脳」による時間:様々な情報を高次に処理する「脳」あるいは「自我」が感じる「時間」

の3種類あるのではないかということ。

1の物理的な時間については、どのような生物にも等しく流れる時間ですが、2の「生物的な時間」は10年以上前に話題となった「象の時間、ネズミの時間」で述べられていたように、一生の心拍数は生物種に限らずほぼ同一レベルと仮設したときの心拍間隔と寿命の相関に見られる、代謝の状態などに起因する「相対的な時間」の流れを意味しているのではないかと思われます。

“ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)” (本川 達雄)

最後の3については、「心理学的な時間」ともいえますし、佐々木正悟さんが書かれている「ロボット心理学」における「ロボット」すなわち「パターン化処理による脳の省力化」により、脳の活動レベルが下がるために、「相対的」に心の時間の流れがゆっくりになるため、実際の時間の進み方が「速く」感じてしまうものなのではないかと推察します。

時間感覚のズレを意識する

日々の生活においては、心の時間と実際の時間にずれが生じたままに放置してしまうと、「なぜか無駄にしてしまった時間」に対する罪悪感や後悔に悩まされることになります。年を重ねれば重ねるほど、3分あたり1秒も自分の時間が遅くなります。要するに、1時間あたり20秒。1日で8分も遅れてしまいます。そこに別の心理的な要因が加味されれば、さらに時間の進みは遅れます。

この時間のズレを意識することが出来れば、行動計画と実際の行動時間とのズレを修正することが容易になります。ちょっとしたズレも、ちりも積もれば、、、です。逆に考えれば、常に予想した時間よりも実行する時間は長くなると考え、常に余裕を持ったスケジュールを考えることが必要である、という認識に立つことも出来ます。

日に新たが時間を長く使うことが出来る

新しい経験や新鮮な経験など、刺激を増やせば増やすほど脳の活動量が増え、相対的に感じる時間が速くなり、実際の時間を長く感じることが出来るようになります。

刺激の少ないマンネリ、すなわち「ロボット」化した状態で、安逸をむさぼるのではなく、新しい経験への冒険を忘れないようにすることも、時間を長く感じる秘訣といえそうです。アクティブな年配の方が若々しく見えるのも、そういった日々の行動による刺激が普通の人よりもかなり多いために、実際の時間をより長く感じることが出来、結果として生体的にも若い状態を維持できているのかもしれません。

参考図書

“ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)” (本川 達雄)

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「ロボット心理学」 (佐々木正悟)

“大人の時間はなぜ短いのか (集英社新書)” (一川 誠)

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