「残業をしない」というのはそれほどおかしなことか?

ただ今、中途採用の活動を始めています。社会人になって10年以上は経過していますが、採用活動というのは初めての経験です。たった4人の小さな外資系の会社ですから、 一人を採用するというのはとても大きなことです。20%を変えるということに相当するからです。

ともかく、自社が求める人材をエージェントなどに説明する必要があります。そうしたときに一様に驚かれるのが、「弊社ではほとんど残業をしない。する必要もない。」ということを説明するときです。そもそも、「定時」の時間枠で所定の仕事を終わらせることが出来ない、というのが異常事態なのです。そういった正しい常識が失われているように思われてなりません。

残業するというのは、いつも遅れる通勤電車と同じ

電車が定刻に駅に来ないことを不満に思う一方で、頼んだ仕事が定刻に終わらないことを黙認しているようです。

それはどう考えてもおかしくありませんか?たとえるならば、いつも定刻より遅れてしまうラッシュ時の通勤電車のようなものです。決まって、東京駅、渋谷駅、新宿駅、大手町駅などのターミナル駅に到着する直前に、混雑していることをわびて「定刻より10分遅れての到着となりましたこと、お急ぎのお客様には大変申し訳ございませんでした」とお決まりのアナウンスが響きます。ほぼ毎日こういったアナウンスを聞きます。

おかしくないですか?

「仕事は定時までに終える」という決められたとおりに実行できないのは仕事のプロセスに問題があるはずです。もちろん、「能力不足」という場合もあり得ます。ですが、私のこれまでの経験では、プロセスに問題があるのにもかかわらず、放置しているケースが多々あるのが悩ましいのです。

特に、少人数の会社では、「プロセスの問題」は致命的です。個人事業主ならなおさらでしょう。少しでも効率を上げ、生産性を上げなければ、少人数の組織は成り立ちません。出来る限りITを駆使し、コミュニケーションを密にして、成果をあげることに集中しなくてはならないのですから。

残業している人への8つの質問

  1. そもそも、ちゃんと定時に終わるように仕事を組み立てているのでしょうか?
  2. 残業手当を期待して、残業することを前提で仕事を組み立てていませんか?
  3. そもそも、定時に仕事を終わらせなければいけない、ということをないがしろにしていませんか?
  4. 残業するのが当たり前と思っていませんか?
  5. そもそも、何のために働いているのですか?
  6. 自分自身の人生を会社以外のところに持っていないのですか?
  7. 残業している時間がもったいないと思いませんか?
  8. 残業時間を他のことに使いたいと思いませんか?

そうはいっても、残業しなければ仕事が終わらない、という反論も聞きます。

でも、それはおかしい。そういう仕事の状態になっていること自体が異常であり、仕事の進め方、プロセス、タイムマネージメントを見直して、最適化する努力をすべきです。

なぜ、残業してはいけないのか?

残業すれば、自分自身の時間が確実に失われるからです。本来ストレスから解放され、本来の自分に戻ることができる貴重な時間を失うからなのです。 特に、責任が重くなればなるほど、忙しくしすぎてはダメです。なぜなら、「心には時間を必要とする」からなのです。

重大な決断を下すためには、時間がかかるのだ。ここをどんどんスピーディーにやろうとすればするほど、心へのプレッシャーは大きくなる。機械的な判断基準を当てはめていけば、行動のスピードはどんどん速められるが、心はそれに追いつけない。そういう状態が長い間続くと、心理的な負担はとても大きくなる。だから、心には何らかのかたちで、「じっくりと納得がいくまで検討する」時間を与える必要があるのだ。

〜ライフハック心理学 佐々木正悟

“ライフハック心理学 ―心の力で快適に仕事を効率化する方法” (佐々木 正悟)

仕事の難易度は、今後もどんどん上がっていくでしょうし、ストレスもどんどん大きくなっていきます。しかし、仕事で大事なのは「決断」することです。立場が上になればなるほど、「決断」することの重みが増していきます。「決断」することを避けて、作業に逃避することはとても楽です。それはただ、「これだけ頑張っているのだから」と忙しいことを肯定して、真に重要なことから逃げているだけです。ごまかしているだけです。悪くいえば、卑怯者がやることです。

正しい、納得のいく「決断」をするには、「時間」を作らなくてはならないのです。残業している場合ではないのです。仕事以外の場で、自分を解放しながら、「決断」に至るまでの「時間」を確保し、さらに、新しい視点からのヒントを求めて異質な出会いを求めることも同様に大切でしょう。

仕事で忙しい自分に酔っているだけ

前出の佐々木正悟さんのブログにこんな指摘があります。

仕事の成果から得られる報酬よりも、作業自体によって充実感が得られるという説は、搾取したい人たちに力を与えるので、その点はよくよく警戒する

仕事にはほどよい実感が欲しい (佐々木正悟のライフハック心理学)

上記の指摘の前半部分、「仕事の成果から得られる報酬よりも、作業自体によって充実感がえら得る」というのは、大いに注意しなくてはならない問題です。作業しているだけで、あたかも「仕事ができている」という偽りの充実感に酔いやすいからです。あくまでも「作業」と「仕事」を同列に扱ってはならず、望ましい成果・貢献にフォーカスするのが「仕事」です。「作業」はあくまでも、一つの手段に過ぎず、いくつかの選択肢が常にあるはずだということをとどめておく必要があります。

ところで、成果主義を否定する向きに、「これだけ努力している」というプロセスを重視すべきだという意見もあります。一見もっともらしい指摘ではあるのですが、「作業で満足してしまう」という危険を助長しかねませんので、注意が必要です。うまくいかないときの慰めでは、困りものです。

あくまでも、作業によって得られる「成果」もしくは「貢献」をベースに議論しなくてはなりません。「無駄な作業」をやって満足しているだけではないか、「成果」あるいは「貢献」をえるために、もっと別の効率的な方法はないか考える必要があります。自己陶酔していないか、冷静な目で自分自身を見つめなくてはダメです。

定時に帰ろう

仕事のやり方を根本から問い直して、「定時に帰宅」できるように業務を組み立てるのが基本です。そうでなければ、的確な「決断」をするための「心の時間」を確保できません。確保できなければ、当然仕事のクオリティーは下がり、デフレスパイラル状態に悪い方へと坂を転げ落ちるだけです。そうならないように、歯止めをかけなくてはなりません。

英会話スクールに通う、MBAを学ぶ、セミナーに参加する、異業種交流会に参加するなど、仕事以外のやりたいことを提示後に予定として入れ込み、先に時間を確保してしまう。そうすると、残業しないで済むように仕事を組み立てるインセンティブが働きます。また、「残業を強要する上司は、まともな上司ではない」ことも、経験上からも同意できる公式だと思います。残業で業務をこなすのではなく、あくまで定時の範囲で期待される貢献を果たすことが、正しい働き方です。それが認められないのであれば、正しい会社に転職するなり、自ら起業すればいいことです。それだけのことです。

ただし、起業するのであれば、「会社」と「人生」は大きく混じります。区別など無理です。しかし、大事な「決断」を必要とする機会は圧倒的に増えます。そのためには、「時間を必要とする」ことだけは、肝に刻んでおいたほうがいいでしょう。そして、「決断」をしやすくするためにも、「ビジネスプラン」を微に入り細に入り練り上げて、起業することが大切になります。

「心のための時間」を確保することは、どんな場合でも必要なことです。

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